子どもの反り返りはなぜ問題なの?

園長通信を書き始めた初めの頃、こんなブログをアップしました。

赤ちゃんが反り返って泣くのはなせ?

 

園長通信の中で、今でも一番アクセス数が多いそうで、悩んでいる方がこんなにたくさんいらっしゃるのだなと驚きました。

 

 

今回は、赤ちゃんの身体のにおこっている事と、お母さんの困り感がどうすれば解消するのかについてを具体的に考えてみたいと思います。

 

何が問題なのか?

昔と違って、現代は便利なものが考え出されて、生活も子育ても随分楽になってきています。

赤ちゃんの生育にも役立ち、お母さんの手間も省けるいいものもたくさんあります。

しかし、大人が楽をすることで子どもの発育を妨げるものも案外あるんです。

 

 

私たちが一番気になる、安易に使ってはいけないと思うもののひとつが「だっこ紐」です。

赤ちゃんがだっこ紐の中で手足がブラ~ンと完全に脱力している姿や、身体が伸びたまままっすぐに縦抱きをされている姿を見ると赤ちゃんの状態が心配でひやひやします。

赤ちゃんは苦しくはないかな?辛くないのかな?と思うこともしばしば。

仮に大人サイズのだっこ紐があって、そこに入って吊るされてみたら、私たちはどれくらい耐えられるでしょうか・・・。

逆におんぶなら、暫くおぶさっていても大丈夫なのではないですか?

 

お母さんの背中の丸みに身体を添わすことが出来るおんぶに比べて、だっこ紐の中に入れられている赤ちゃんの体勢はとても不自然かつ不自由で、本来必要な動きが出来ません。

 

抱かれた時に身体中でぎゅっとしがみつくという動きが重要で、その動きによって体幹がととのったり、握る為の手の機能が鍛えられたり、転びにくい足腰が出来たりするのです。

そして、スプーンや箸を握る時期、鉛筆を持つ時期になると自然に正しい位置で持てるようになり、背筋を伸ばして椅子に座れるようになるのです。

 

反り返る癖がついてしまうと・・・

抱き上げようと脇に手をやると、とたんに脱力して重くなる赤ちゃん、脇がしまらずバンザイポーズになってしまう赤ちゃんなども増えてきました。とても気になります。

 

 

寝ている間に腕が脱臼していまう乳児が増えてきたと、整形外科の医師の話ですが、ここにも因果関係があると思われます。

そして、そのように育っている赤ちゃんにうつ伏せ遊びをさせても、なかなかハイハイや高這いになりません。

腕と足が反りあがり、おなかだけが床について飛行機ポーズのままバタバタしているだけになってしまってい、そのうち身体と筋肉が育ってつかまり立ちが出来てしまいます。

 

 

寝返りに続く「ずりばい」「ハイハイ」「高這い」は発達段階の中でどうしても飛び越してはいけない必要なものなのですが、それが出来るようになる為に必要なことが、おなかの中にいた時のような身体の形「丸く」育てること。

赤ちゃんの背中が丸くなり、手足を上手く使えるから、腹ばいから手足を使って上手く動けるようになるのだと思います。

爬虫類の動きである「ずりばい」から、哺乳類の動き「はいはい」へと移行するのは、脳の働きとも関係しています。

 

「子どもの内部感覚を育てる動き」と「脳の発達」の関係

 

のけぞることが悪いのではない

赤ちゃんは、丸まったり、のけぞったり、しながら自由に動き、発達の過程で色々な機能を獲得していきます。

基本のポーズが丸くなっていると、そこからのけぞりのポーズになってもまた丸く戻ります。

これを交互にすることで、前面の腹筋と背面背筋のバランスが取れるのですが、心配な赤ちゃんの基本状態は、身体がまっすぐになっている位置からのけぞり、まっすくに戻るだけなので、なかなか腹筋群が鍛えられません。

 

丸めたバスタオルの上での、こんな遊びもよい

 

その上、丸まっている時は副交感神経が優勢でリラックス、のけぞっている時は交感神経が働いていて戦闘態勢ということになります。

のけぞっているのは、いつでも緊張している状態。

身体が辛くなるのに力を抜いて丸まることが出来ない赤ちゃんは泣き叫ぶしかないわけです。

 

どうか、伸びたり丸くなったりする遊びを取り入れて、丸くなる居心地の良さを思い出させてあげて下さい。

そして、腹筋群背筋群共にバランスよく育ててあげて下さい。

よく転ぶお子さんの原因も、このあたりにあることが多いかもしれません。

 

社会性の基礎を育てる

自分でしがみつくことで体幹や手が育たない弊害以外に、実はコミュニケーション力の獲得にも大きな差があることがわかっています。

 

 

「抱っこ紐」に対して、紐を使わない「抱っこ」や「おんぶ紐」の決定的な違いが、「三項関係」が結べるかどうかというものです。

三項関係とは、赤ちゃんと他者と物を三点でつないだ関係のことで、お母さんが「あ、ブーブーだね」と車を指さすと、赤ちゃんはその言葉に反応しながら、同時にお母さんの視線、指差しの方向を見て車だと認識します。

赤ちゃんは、こうやって言葉と発する人の気持ちを学んでいくのです。

 

赤ちゃんと語りかける大人、赤ちゃんと物という別々だった「二項関係」の世界がしっかり結びつき「三項関係」に発展するには、おんぶのように同じ方向を見ることが出来る環境が最適です。

そして、「言葉がわからないから」と決めつけずに、見えるものを説明するように語り掛けていると理解していきます。

これが、「他者と物を共有して遊ぶ」という集団生活にはとても必要な能力になります。そして、社会生活へとつながっていくのです。

 

2024.7.9