原始反射を利用する
原始反射については、以前の園長通信で詳しく書きましたので、今回は、新生児から離乳食を終えるまでにスポットを当ててみます。
新生児が、教えられなくても母乳や哺乳瓶のミルクを飲めるのは「原始反射」によるものです。
生まれながらに備わっているいくつかの原始反射の哺乳に関するものは次のとおりです。
哺乳のための原始反射
・探索反射・・・唇に触れたものを探す
・捕捉反射・・・唇に触れたものを舐めたり咥えたりする
・吸啜(きゅうてつ)反射・・・乳首や指を舌で吸う
・口唇反射・・・触れたものを口の中に入れて唇を閉じようとする
・咬反射・・・固形物が奥の歯ぐきにふれるとかみしめて飲み込まないようにする
・舌挺出反射・・・スプーンや固形物に対して、舌で口の外に押し出そうとする
たくさんありますね。
これらの中の、必要な反射が必要な状況で有効となり、赤ちゃんはお母さんのおっぱいを飲めたり、まだ飲み込んではいけないものを口の外に押し出すことが出来るのです。
そして、月齢があがるにつれ、お乳を飲むときは蠕動運動だった舌の動きが変化していきます。
歯ぐき、上あごなど、口腔内の動きの連動で、味わい、かみ砕き、飲み込むという「食事」をする準備をしているだけでなく、呼吸、話す、表情、唾液の分泌などが正しく行われるように口腔機能を獲得していくのです。
赤ちゃんの、ミルクを飲んでいる様子や状態などをしっかり観察するとよい
月齢だけ考えて離乳食を始めてしまうことは「原始反射」を無視することになりますので、上手くいかないのは当たり前です。
「離乳食を始めたのに、子どもが舌で出してしまい食べないんです」というお悩み相談への回答は、
「まだ舌挺出反射が現れているので、固形物を与えるのは早いです」ということになりますね。
お母さんの乳首や哺乳瓶の飲み口に反応するのが捕捉反射や吸啜反射なので、硬いものに反応する舌挺出反射が見られるということは、固形物はまだ早いと理解してください。
ここで無理に食べさせてしまうと、「乳児嚥下」が残ってしまい、大人の嚥下への切り替えがうまくいかない場合もあります。
普通食になって丸のみや早食いのお悩みもよく耳にします。
「どんどん飲み込むように食べてしまうんです」
飲みやすい哺乳瓶を使っていると、舌は使われず喉で飲み込みむことを学んでしまうので、柔らかいものは噛まずに飲み込むようになってしまいます。もしかしたら大人になっても飲み込む癖が直らないという方は、このケースかもしれませんね。
哺乳瓶は、母乳を飲むときのように舌をしっかり使えるものにしましょう。
どうも噛んでいない、丸飲みかもしれないと気づかれたら、すぐに舌でつぶしたり歯茎で噛むことを教えましょう。
大き目のさいころに切ってゆでた人参やジャガイモなどの野菜を与えて下さい。柔らかすぎても硬くてもいけません。
口に入れた野菜を、舌と上あごで上手くつぶして、唾液と混ざった状態(ポタージュ状)でごっくんと嚥下するのが理想です。
一緒に口を動かして、噛む姿を見せるのもいいでしょう。