離乳食のタイミング ~身体編

前回は、離乳食のタイミングを「意欲」を持たせて心身ともに成長させるということに主眼を置いてお話しました。

 

今回は、赤ちゃんの身体の発達に添って進めることが大切で、上手く進められると親子共にストレスが少ない方法だということを、少し長くなりますが 「原始反射」と「身体の発達」の視点から考えてみましょう。

 

その前に•••

これは園舎の玄関に毎日展示する給食で、下段に展示してある中期〜完了までのサンプルは、離乳食を作っているお母さん達への参考にしてもらっているものです。

 

今日の献立は、魚のムニエルポテトソース掛けとミネストローネ。

1食分を並べてみました。

左上から「中期」下へ「後期」右上は「完了」その下は二才児の通常量です。

 

離乳食は◯ヶ月になったら◯◯を、というような一律に決められるものではありません。

園では、始める時期、次の調理形態に進むタイミングなど、お子さん一人ひとりの食べ方、身体の発達などを考え、保護者と相談して決めています。

 

原始反射を利用する

原始反射については、以前の園長通信で詳しく書きましたので、今回は、新生児から離乳食を終えるまでにスポットを当ててみます。

 

 

新生児が、教えられなくても母乳や哺乳瓶のミルクを飲めるのは「原始反射」によるものです。

生まれながらに備わっているいくつかの原始反射の哺乳に関するものは次のとおりです。

 

 

哺乳のための原始反射

・探索反射・・・唇に触れたものを探す

・捕捉反射・・・唇に触れたものを舐めたり咥えたりする

・吸啜(きゅうてつ)反射・・・乳首や指を舌で吸う

・口唇反射・・・触れたものを口の中に入れて唇を閉じようとする

・咬反射・・・固形物が奥の歯ぐきにふれるとかみしめて飲み込まないようにする

・舌挺出反射・・・スプーンや固形物に対して、舌で口の外に押し出そうとする

 

 

たくさんありますね。

これらの中の、必要な反射が必要な状況で有効となり、赤ちゃんはお母さんのおっぱいを飲めたり、まだ飲み込んではいけないものを口の外に押し出すことが出来るのです。

 

 

そして、月齢があがるにつれ、お乳を飲むときは蠕動運動だった舌の動きが変化していきます。

歯ぐき、上あごなど、口腔内の動きの連動で、味わい、かみ砕き、飲み込むという「食事」をする準備をしているだけでなく、呼吸、話す、表情、唾液の分泌などが正しく行われるように口腔機能を獲得していくのです。

 

 

赤ちゃんの、ミルクを飲んでいる様子や状態などをしっかり観察するとよい

 

 

月齢だけ考えて離乳食を始めてしまうことは「原始反射」を無視することになりますので、上手くいかないのは当たり前です。

 

 

「離乳食を始めたのに、子どもが舌で出してしまい食べないんです」というお悩み相談への回答は、

「まだ舌挺出反射が現れているので、固形物を与えるのは早いです」ということになりますね。

お母さんの乳首や哺乳瓶の飲み口に反応するのが捕捉反射や吸啜反射なので、硬いものに反応する舌挺出反射が見られるということは、固形物はまだ早いと理解してください。

ここで無理に食べさせてしまうと、「乳児嚥下」が残ってしまい、大人の嚥下への切り替えがうまくいかない場合もあります。

 

 

普通食になって丸のみや早食いのお悩みもよく耳にします。

「どんどん飲み込むように食べてしまうんです」

飲みやすい哺乳瓶を使っていると、舌は使われず喉で飲み込みむことを学んでしまうので、柔らかいものは噛まずに飲み込むようになってしまいます。もしかしたら大人になっても飲み込む癖が直らないという方は、このケースかもしれませんね。

哺乳瓶は、母乳を飲むときのように舌をしっかり使えるものにしましょう。

 

 

 

どうも噛んでいない、丸飲みかもしれないと気づかれたら、すぐに舌でつぶしたり歯茎で噛むことを教えましょう。

大き目のさいころに切ってゆでた人参やジャガイモなどの野菜を与えて下さい。柔らかすぎても硬くてもいけません。

口に入れた野菜を、舌と上あごで上手くつぶして、唾液と混ざった状態(ポタージュ状)でごっくんと嚥下するのが理想です。

一緒に口を動かして、噛む姿を見せるのもいいでしょう。

 

 

内臓の始まりは口の中

『唯一目に見える消化器官は歯である』と言われるように、消化は、口の中から始まります。

唾液と混ぜ合わせるということがとても重要で、それをせずに飲み込んでしまうと胃や腸に負担をかけます。

負担になって驚いた身体は『もしかして、唾液が足りないのかな?」とよだれをどんどん出すのではないかと考えています。

それは、普通食になってからもなかなかよだれが止まらなかったお子さんの多くが、噛まずに飲み込んでしまっていたという過去の経験から、私たちはこの時期の摂取方法の重要さを実感しているのです。

 

離乳食開始の目安と方法

離乳開始の発達の目安にするには、次の二つの点に気を付けて下さい。

・首のすわりがしっかりして寝返りができ、床で十分に遊べるようになった後に椅子に座れるようになったこと。参考「椅子に座っていられないのはなぜ?」

・スプーンなどを口に入れても舌で押し出すことが少なくなったタイミング

 

 

危険だと思うのは、母乳やミルクを飲んでいる赤ちゃんが欲しがるからと、食卓の親の皿からご飯やおかずをそのままやってしまうことです。

「食べていくんです」とおっしゃるお母さんがいらっしゃいますが、それは食べているのではなく飲み込んでいるだけなのです。

それは、間違った飲み込み方を覚えてしまうことにも繋がります。

 

 

原始反射の舌挺出反射が少し残っているうちに、液体状の離乳食を口に流し込むと、反射で舌を動かしながらも飲み込んでいきます。

10倍に炊いた重湯の上澄みを小さじ1杯から始めましょう。慣れたら小さじ2杯へとゆっくり増やすことで、ミルクとは違うものを口に入れることに慣れていきます。

その後、今度はペースト状に変え舌の上で転がしてから飲み込めるようにします。冒頭の写真の「中期」の状態をご覧ください。

与えるときは、下唇にスプーンを当てて待ち、自分で口の中に「あむっ」と取り込めるようにします。

 

 

離乳食のスタートから「咥えること・噛むこと・潰すこと」を教え、習慣として身につけることは、口の周りだけでなく、脳や全身の発達にも良い影響を与えていきます。

 

食事の姿勢

両手は机の上に出し、足が床に付く姿勢を考えてあげて下さい。

個食ではなく、出来たら家族みんなで食卓を囲んで一緒に食事をして下さい。

見ることで覚えていくことや、真似をしたいと意欲に繋がることが多いです。

 

手を伸ばして触るので手を出さないようにし、親がどんどんスプーンで食べさせている、という話を聞いたことがありますが、それでは育つものは少ないです。

手づかみをさせると、手や顔が汚れる、床に落とすなど、できたら避けたいお母さんが多いかもしれませんが、食べる意欲を持たせたり、触感を鍛え食べられる量や食べ物の状態を無意識にでも知る大切な段階なので、避けないようにお願いします。

 

 

また、足が床についていないと嚙み締めにくく姿勢が悪くなり、変な呑み込みの癖がついてしまいます。

歯並びは勿論、全身の健全な発育のために、お子さんの状態をしっかり観察して、お子さんにとっての正しい離乳食の進め方を見つけて下さい。

 

 

2024.6.27